
9月になっても真夏張りの暑さが続いていましたが、ここ数日その暑さも落ち着いて、心持秋の訪れを感じるようになりました。
そんな9月23日秋分の日、久々の寄席に出かけてきました。
場所は勿論浅草、僕たちの寄席のホームグランド浅草演芸ホールです。
お昼は河豚

浅草は老舗も多いし、またインバウンドや若者のエモいブームで新店やB級グルメの店も増えています。
でランチをどうしようか考えて、そういえば久しくフグを食べてないとなり、だったらフグでも食べましょう!となりました。


ということで浅草演芸ホールにもほど近い、とらふぐ亭で御膳をいただきまました。
フグ飯にてっさにフグの唐揚げ、みそ汁小鉢のついた御膳は、ランチにはちょうどいいサイズ。
フグにしかない食感のてっさと、同じく一瞬魚?お肉じゃないの?と思わせるフグの唐揚げ。そしてフグの旨味たっぷりの出汁で食べるフグ飯と、大満足でした。
ご馳走様でした。
令和7年9月下席


過去のブログにも書いた気がしますが、浅草演芸ホールへ入場すると手渡される番組表の表紙の挿絵は、笑点のオレンジこと林家たい平師匠の手によるものです。
なかなか味のあるいい挿絵だと思います。
出来れば笑点での回答もこの絵ぐらい気の利いたものだといいんですがね。
物まねは誰の真似なのかわからず、回答も座布団がもらえるレベルには遠く、お線香のCMの歌も十人並みですから(笑


9月下席はなかなかのキャラクター、名人が名を連ねていて豪華でしたね。
昼の部

フグでお腹を満たして急いで演芸ホールに滑り込み、この豪華メンバーなら満席かもと不安になりながら、ここでの僕たちの指定席の二階に駆け上がりました。
ドアを開けてると、拍子抜け。
いつもはほぼ埋まっている指定席の、二階最前列には三人しかいません!というか二階席全体で三人しかいません。
嬉しいような悲しいような心持で、でもありがたく二階席最前列に座らせてもらいました。ここからの眺めが上の写真です。
五明樓 玉の輔

独演会や二人会と寄席の違いは、演者の数。
つまり寄席で様々な噺家と出会って、自分の推しを見つける。寄席にはそんな楽しみがあるのですが、今回も掘り出し物?!を見つけました(笑
それが五明樓 玉の輔です。
演目は新作落語のようでして、真言宗を信じる商家の旦那と、キリスト教に救いを求める若旦那の巧妙なやり取りなのですが、何しろ斬新!面白い!
一度独演会に行ってみたくなり調べたら、春風亭小朝師匠のお弟子さんでした。
そりゃうまいわけだ。
三遊亭歌武蔵

開口一番「ただ今の協議についてご説明いたします」のしゃべりだしがド定番の、元力士、三遊亭歌武蔵も御贔屓の一人です。
声の質と通りがどっしりとしていて、いかにも元関取らしく、なのに妙に面白いことをいう、そのギャップがいいのです。
枕も面白く、今回は乗っていたのでしょう、持ち時間いっぱいを枕で楽しませてくれました。

パワハラ問題があり、ここしばらくの間なりを潜めていた圓歌ですが、ぼちぼち出現するようになりました(笑
パワハラはいけませんが芸風は独自のスタイルでいいですね。
鹿児島弁交じりの、というか鹿児島弁が主体の口調で、1分に一度は笑わせようとする漫談落語に近いその芸風を、僕以上に最愛の妻がお気に入りです。

歴代最高36人抜きで真打になった天才名人の小朝も推しの一人です。
ソフトでウィットが効いていて、どこか洗練されたそんな落語を楽しませてくれます。
海老名みどりトの離婚同道では金髪豚野郎と命名されましたが、それでも風貌を変えない芯の強さ?もあるみたいですね。

こちらもなかなか面白い彦いち師匠。
僕の一押しの喬太郎とも仲がいいみたいで、よく二人会や三人会で組んでいる印象があります。
今回は歌武蔵と同じで、枕だけで持ち時間を笑わせてくれました。

今回推しでも何でもないのに昼の部のトリを飾ったのが、笑点の黄色の息子、二代目になるのかな、林家木久蔵です。
これも前に書いたと思いますが、もっともっと修行と研鑽が必要ですね、この世襲噺家には。
落語自体はだいぶ良くなりましたが、間合いや浮き沈みといった、その噺家が持つ人生経験からくる味、深みがまだまだ足りません。
頑張ってください。
夜の部
立花家 橘之助

浅草演芸ホールは昼の部夜の部で入れ替えのない、令和の時代にあっては幻のような昭和時代の夢のようなシステムを採用してます。
だから夜の部でも御贔屓が名を連ねていれば、堂々と席に座って夜の部の幕開けを待っていればいいのです。
そして出ました、プチ押しの立花家 橘之助姉さん。
寄席は落語だけでなく、漫才、漫談、紙切り、曲芸、マジックなども箸休め的に?披露されますが、そこで浮世節というなんとも乙な芸を披露してくれるのが、この橘之助姉さんです。
若いころは三味線良さなど皆目見当もつきませんでしたが、歳ですね、この三味線の音と、浮世節と橘之助姉さんの立ち居振る舞いが、妙に艶っぽくていいんでよ。
若いころは小股の切れ上がったいい女で、浅草界隈では名を馳せてたんでしょうね。

一押しは何といっても柳家喬太郎師匠。
毎回一貫性がありながらも違う顔、違う一面を見せてくれましたが、今回は彼の中の左翼中の左翼を爆発させました。
高座に上がるやいなや、枕もなく羽織の紐に手をかけて「いい掛け軸だね」と来たので、ほう、今回は古典か。。。と思った次の瞬間
「うん、あれはウルトラマンジャックの掛け軸なんだ」?!!!!
そこからはもう自称キョンキョンのレフトウイング広げっぱなしで、詳細なウルトラマンストリー時々落語風で、場内は大爆笑の渦。
たまたま一階席にも僕と似たような世代の人が多かったのでしょう、バカみたいな笑い声が響き、二階席からは僕の同じくバカみたいな笑い声が降り注ぎ、それに気をよくしたのか喬太郎は益々熱が入りの連鎖で、持ち時間はあっという間に過ぎていきました。
喬太郎もかなり上機嫌だったようで、高座から降りる際に上を前に突き出して、シュワッチ!!と声を出して帰っていきました。
あの館内を笑いの渦に仕立て上げる引力を、名人といわずしてどういうのでしょう。
今回も心の底から笑わせてもらいました。
あ~笑った笑った

何度来てもここだけ昭和、中はお江戸の浅草演芸ホール。
いいたたずまいです。
それにつけても昼の部のトリの紹介写真の林家木久蔵。
これ本当に本人?????!!!!!!
っていうか何年前、いや何十年前の写真使ってんの?これって十代の入門したての頃の写真じゃないの?

母が好きだった落語を僕も好きになり、そして家内も好きになり、今では夫婦の娯楽の一つが寄席巡りと落語鑑賞です。
夫婦揃って美味しいものを食べて、寄席で大笑いして、浅草をそぞろ歩きしながら家路につく。
心から幸せだと思います。
今に感謝。