
寄席では何度か楽しませてもらった林家つる子、女流落語家です。
このつるこの番町皿屋敷が絶妙にして捧腹絶倒。一度彼女の独演会を聴いてみたいと思っていましたが、そのチャンス到来です。
チケットを予約したのですが、会場が人形町と、落語を楽しむのにはもってこいのロケーション。
一時間の時間休早退をして家内と二人で人形町で待ち合せました。
人形町といえば甘酒横丁と水天宮



人形町はビルが立ち並ぶ街ですが、一つ路地に入ると昭和の風情、江戸情緒の色濃く残る街です。
この神社は安産、子授けにご利益があり、本来は長女が妊娠中にお参りするべき場所でした> <
僕は過去に来たことがありますが、家内はまだだったので、晩御飯にも少し時間が早いのでお参りに行ってきました。
晩御飯は急遽変更なれど大正解?!

こむぎ真理教に入信してから外食先の選択が困難を極めてます。
こむぎ、乳製品を使っていない外食メニューとなると相当絞り込まれ、なおかつ各地域でその絞り込まれたメニューの美味なる評判の店探しとなると、困難を極めます。
そんな中何とか人形町で見つけたのが、東京一?との書き込みもある焼鳥重の店、おが和。ここで晩御飯にしよう!と予定していて、確認のため営業時間を問い合わせると
「夜はいつも予約のお客様で満杯なんです」
「そ、そうなんですね…」
当日の昼過ぎから急遽昼休み時間を目いっぱい使って、こむぎ真理教にかなう店探しが始まりました。

その昔、日本橋堀留界隈は呉服問屋が多く、若かりし頃はお着物の仕入れで人形町や小伝馬町に出かけたものです。
その当時、日比谷線人形町駅を出たすぐのところにキラクという名店がありました。この店の売りは当時としては珍しかった牛カツで、林家木久扇が木久蔵当時の枕にもよく使われていたそうです。僕もよくお世話になりました。
しかし、数年前、いやもう十年ぐらいになるのかな?そのキラクは店じまいをしてしまったのです。
でも、キラクの娘さんが同じ人形町で店名を変えて、キラクと同じメニューで店を始めたと情報が記憶の片隅にありました。
そして見つけたのです!

かつてのキラクのような長いカウンター席にオープンキッチン。
そこで牛カツを揚げている女性の顔は、まさにあのキラクのカウンターで父であるご主人の手伝いをしていた、その人の顔でした。
年のころは僕より2つ3つ上という感じのその女性も、相変わらずの下町育ちの歯切れのいい話ぶりと動きに、懐かしさがこみ上げてきました。


僕のオーダーは云うまでもなく牛カツ。
今の支流の厚手のビーフではなく、薄いお肉に薄衣でさっと上げてしまうのがキラクの牛カツ。もちろんここ、よそいち(店名)でもそうです。
そして自家製かな?少なくともブルドックではないと思われる中農かウスターソース、または塩をかけて食べるのですが、肉自体の味がいいので塩でも結構いけます。
久々にキラクの牛カツを食しましたが、ノスタルジーもありますが、それをおいてもやはり美味しい!

家内は衣のないポークジンジャーを注文しました。少し味見でいただきましたが、このポークジンジャーもキラク伝統の味でした。
見ての通り結構大きなポークだったので、小食の家内にとっては多すぎると思ってたのですが、よほど美味しかったのかご飯の含めてお肉もすべて平らげて、僕を驚かせてくれました。
本当に懐かしくもまた、とても美味しかったです。
ご馳走様でした。
林家つる子独演会



多分今女流落語家といえば林家つる子と蝶花楼桃花の二人がツートップでしょう。
桃花が可愛いタイプならつる子は美人型。そんな容姿も手伝ってか二人とも人気があります。しかし、見た目だけで御贔屓が増えるほど落語の世界は甘くありません。
この二人、二人会や独演会でも会場を満席にできるほどの噺家としての実力がその割っているからこその今の人気なのです。
蝶花楼桃花は昨年柳亭子痴楽との二人会を楽しませてもらいました。
そして今回はつる子の独演会です。

会場の日本橋社会教育会館ホールの収容人数は204席です。
僕たちの席はJ列で後ろから三番目ぐらいでしたが席はほぼ満席。つる子ファンの多さを目の当たりにした気がします。
演目は一つ目は「宗論(しゅうろん)」です。
熱心な浄土真宗の信者である父親と、キリスト教に凝り始めた息子の間で繰り広げられる、教義を巡る激しい口論(宗論)を描いた滑稽話です。
登場人物: 浄土真宗の熱心な旦那(父親)と、キリスト教に傾倒した息子。
発端: 息子が教会から帰宅し、父親に「握手」を求めるなどの西洋風の振る舞いを見せ、父親が激怒するところから論争が始まります。
論争の内容: 父親は阿弥陀如来の教えのありがたさを説き、息子は「偶像崇拝」を否定し、天の神が「造り主」であると聖書の一節を引用して反論します。
結末: 激しい口論の末、旦那が興奮して息子に手を出しそうになったところへ、飯炊きの権助(ごんすけ)が仲裁に入り、「宗論はどちら負けても釈迦の恥」という有名な言葉で両者を諭し、場を収めます。
下げは番頭に再婚を勧められた旦那。その相手の名前が「ふみえ(踏み絵)」と、お後がよろしいようで(笑)
二つ目の演目は人間が「虎の役」を演じる(なりきる)という設定の「動物園(どうぶつえん)」です。
仕事が長続きしない主人公の男が、親戚から「特別な仕事」を紹介されます。
仕事内容: その仕事とは、移動動物園で死んでしまった虎の代わりに、残った虎の毛皮をかぶって檻の中で虎のフリをすることでした。
虎の演技: 男は園長から虎らしい歩き方などを教わり、早速虎になりきって檻の中で演技をします。
下げは 観客の子どもたちが騒ぐ中、男は空腹に耐えかねて思わず「パンくれ」とつぶやいてしまいます。すると、隣の檻から威厳たっぷりのライオンが近づいてきて、男の耳元で「心配するな、わしも五千円で雇われた」と囁きます。
これは過去に何度か聴いているので下げはわかっていますが、落語家によって少し内容が変わり、これがまた楽しいのです。

中入り後の最後の演目は人情噺の代表作の一つの「たちきり」
これはお初でした。
船場(せんば)の大店の若旦那が、小糸に入れあげ、道楽で借金を作ってしまいます。蔵での幽閉: 若旦那を改心させるため、親族一同の話し合いにより、若旦那は百日間、店の蔵に閉じ込められます。
若旦那を慕う小糸は、彼からの連絡が途絶えたことを「嫌われた」と誤解し、思い悩んで病気になり、亡くなってしまいます。 期限が過ぎて蔵から出た若旦那が、小糸の家へ駆けつけると、仏壇に白木の位牌と、若旦那が贈った比翼紋の三味線が供えられていました。
悲しむ若旦那の目の前で、仏壇の三味線がひとりでに地唄の『雪』*を弾き始めます。若旦那は涙を流して聞き入ります。三味線の音が途中でピタリと止まります。若旦那が「糸でも切れたんか」と尋ねると、小糸の家の抱え主の女将(おかみ)が、仏壇の方を見て答えます。
「若旦那、もうこの妓(こ)は三味線弾かしまへんわ。なんでやて? ちょうどお線香が、立ち切れでございます。」
御贔屓の仲間入り

林家つる子と蝶花楼桃花。
どちらも各々の個性が光る気鋭の女性噺家です。ともにまだまだ枕(最初のつかみ)は、今後に期待の部分もありますが、落語は上手ですね。
ただ好き好きから言えば、感情表現に一日の長があるつる子に軍配が上がるかも。
前座を除くと、中入りも含めて約二時間一人で噺切ったつる子に感動です。
独演会といえどもなかなか三演目実質二時間弱を一人でやりきるのは大変なこと。本当によくやり切りました。
これでつる子も志の輔、喬太郎、小朝、歌武蔵といった僕の御贔屓の仲間入りです。


























きんじゃえもんがデビューして一年半。早いですね〜。




















































