今年初かな?
おおよそ月に一度のペースで数年通い詰めた僕にとってのNo1イタリアン。予約が取れたので1時間のドライブでランチを楽しみに訪問しました。
入り口のドアにはいつものようにランチは予約で満席ですのアラートが。開店同時にドアを開いて中に入るとシェフがにこやかに迎えてくれました。
席に通されてシェフが口を開きました。
なんとサブが昨年いっぱいで辞めてしまい今年に入ってから一人で回してますと。一人で回すのは三組が限界なのでランチも三組しか予約を取っていませんとのこと。
ですから今日はゆっくししていってくださいと。
ちょっと驚きでした。
一つ目の驚きは昨年でサブの○○さんが辞めていたことで、それを今初めて知るということは今年初めての訪問?ということへの驚きです。
二つ目の驚きは昨年このトラットリアのエプロンのデザインと制作を僕とbabarinaで担い、皆さんとても喜んでいたのに何があったんだろうと。
外食産業は離職率が高い話は聞いていましたが、店に通いだして顔なじみになると、ずっとその店にいるんだろうと勝手に思い込んでしまうんですね。
後任が見つかるまでの間は大変でしょうが、どうぞ頑張ってください、シェフ!
アンティパストミスとはいつもの5種盛りで、これはこの店に通い詰めて二年変わりません。
しかもよくありがちなミニトマトにオリーブオイルをかけたものだったり、ベビーリーフにドレッシングなどの簡易なものは皆無で、どれ一つとっても一手間二手間かけたものばかり。
ほどよい歯ごたえがその鮮度を物語っています。
次が同じ魚料理の真蛸と金柑とカリフラワーのサラダ仕立てで特筆すべきは蛸の柔らかさ。
蛸を柔らかくする方法は炭酸で煮る、棒で叩くといくつかありますがどうやっているのでしょうか。本当に柔らかい触感で噛めば噛むほど味が出て、金柑の柑橘系のさわやかさとよくあってました。
パルマ産18ヶ月熟成のプロシュートも初めて口にするパネトーネという甘めのイタリアのパンに発酵バターをのせたものと一緒に口にすることで、未体験のおいしさでした。
熟成された旨みと塩味のあるプロシュートはメロンや桃など甘みのあるものと一緒にすることで、美味しさが倍増しますが、パネトーネがその甘みを分担した感じです。発酵バターはまったり感を担ってましたね。
久しぶりのズッパ系はえいひれと生グリンピースを使ったものとのこと。
味は、ん?中華料理でもいけるかも。。。というややオリエンタルなものでしたが、ここでの関心事は具材の野菜の微塵切りのその粒の小ささ。料理を趣味にしてる自分に取ってちょっと忘れかけていたものを思い出させてくれる手間のかけようでした。
最後はスペインウサギにクミンで風味付けをしたインゲン豆のサラダ。ここのシェフの味付けの傾向は「深みがあるのにくどくない」
この一品もまさにそれ。とかく全面に出やすいクミンを風味程度にして、ウサギ肉に旨みと豆の風味を渾然一体としてまとめ上げていて、結果複雑なのにあっさりしてる、深みがあるのにくどくない味を楽しませてくれました。
とても美味しかったです。
パンも同じく初めて訪れたときから変わらずの三種の自家製パンです。
一皿目のプリモピアットは青森県産シラウオ フキノトウ 柚 カラスミのタリオリーニ。
シラウオは生と茹でたものの二種類がトッピングされていて食感と旨みの違いが楽しめる手間のかけよう。フキノトウの苦みとからすみの塩味を柚がうまく取り持っている美味しさでした。
山菜系の特に苦みを感じるものが苦手の僕でも美味しくいただくことができた一皿でした。
二皿目は函館産イチョウガニ ピスタッチオ クリーム ビーツを練りこんだマルタリアーティ。
マルタリアーティ? すぐにネットで調べてみるとエミリアロマーナ地方の典型的なパスタだとか。何しろビーツでピンク色に染められたラザニアを細切れにしたようなパスタは生クリームの白と相まって印象的。
口にすると生クリームに包まれた濃厚な蟹の旨味に、ピスタッチオの独特な青みのあえるようなナッツ感もあり、もっちりとしてどこかフルーティーなパスタが最高のマッチング。
あまりの美味しさに思わず詳しいレシピをシェフに訪ねると僕が口にした食材とレシピ以外「実は何もしていないんです」との衝撃の返答!
え~!嘘でしょう?なんか怪しい粉でも入れてるんじゃないですか!との問いかけに笑いながら、カニはいいものを使ってますとのこと。
この味がカニと生クリームとピスタッチオだけで作れるのなら、即自宅で再現します。
しかし。。。
この店に足繁く通って分かったことですが、実は手打ちパスタが全ての美味しさの源じゃないかと感じているのです。
それは板チョコと生チョコの違いのような、乾麺の蕎麦と生蕎麦の違いのようなものかな。。。何しろ乾麺のパスタとは食感が明らかにちがいますが、どうもソースののりも違うように感じられるのです。
全身で感じる美味しさといえば大げさかな?でもそれぐらいに美味しかったです。
三皿目のパスタは詰め物系。
セージとバターのソースを使ったアニョロッティで中身のラグーは牛、豚、鶏も入っていたかもの肉三昧。
僕達だけへのサービスだったのでしょうか、メニューにはないパスタは黒トリュフでおおわれていました。
セージとバターのソースは思ったよりも軽やかで、口の中で噛みしめるとラグーの肉汁が溢れだしソースの塩味と交じり合って幸せな気分が広がります。
この手のラグーの詰め物系のパスタは言ってみればイタリアの点心のようです。
セカンドペッシェは真鯛でした。
お肉もそうですが魚も絶妙な火入れに驚かされるこの店ですが、今回の魚料理はヴァポ―レという蒸し煮なそうです。
蒸した魚を頂くのは初めてじゃないかな。
蒸し料理と言いながら皮目には焼き色が。。。
ということはまた一手間で焼き目をつけてから煮込んだのでしょう、もう和食の手間の域ですね。
味はキノコや野菜の出汁を足しても魚特有のあっさり加減で繊細な味でした。
いつからでしょう、最後のカルネは追加料金で選択できるようになりました。
今回も豚、ボンベッタ、鴨、和牛がありましたが、シェフが詳しく説明してくれた初物のボンベッタにしました。
そのボンベッタとはプーリア州の特産品で薄切りの豚肩ロースにペコリーノチーズと塩、胡椒をして巻いたものを串刺しにして炭火で焼いたものらしく、名前の意味は「小さな爆弾」
イタリア人なのでネーミングのいわれは口の中で爆発する美味しさ!ってあたりのような気がします。
さて供されたボンベッタですが下にはトマトソースが添えあっれて、大好きなホワイトアスパラが焼かれて付け合わせに、皿の周りにはペコリーノロマーノが振られていました。
初めて口にするボンベッタ、イメージとしては中身がペコリーノチーズの肉の海苔巻き。
炭火で焼かれた外側の食感と中のしっとりした肉の食感が、タリアータやポークのグリルとは全く違っていて面白い体験でした。
この美味しいお肉料理だけで満足ですが、ある意味一番僕の心を釘付けにしたのは肉の下のトマトソースです。
何故ならば二年以上通い詰めてる店なのに、生粋のイタリアンのトラットリアなのに、一度もポモドーロを口にしたことがないのです。
ですからちょっと失礼だったのですが皿がサーブされた際、初めに口にしたのはトマトソースでした。
さてその味は。。。
口に入れた印象は洗練されてる、こなれてるということ。味よりも先に体が反応したのはそのことでした。その後しっかり味覚を研ぎ澄まして味見してみると、トマトのマイルドな酸味がしっかりあり後追いでほのかな甘みが来る感じです。
僕が作る甘み優先とは一線を画すものですが、何しろこなれてる(笑)
それと色が少しオレンジに近い。これはもしかすると生クリームが入っているかも。
一度チャレンジしたい洗練された味でした。
そんなことで今回はドルチェもシェフの手作りです。
しかしいつもと変わらずの三種類。ということはドルチェのレシピもシェフのモノだったのかも。
パンナコッタにティラミス。そしてピスタッチオを使ったガトーショコラにはアマレーナチェリーというヨーロッパ原産のサクランボをゆっくり砂糖漬けにしたものが入っています。
どれも美味しかったのですがティラミスは前に頂いたものよりも濃厚さ加減とまろやかさと甘みのバランスが数段良かった、美味しかったです。
マシン淹れとはいえ今回唯一ぎりぎりの及第点が珈琲。
豆からエキスが上手く抽出されていないような印象を受けました。
コーヒー通なのでどうしても淹れ方の評価は辛口になります。ただ今回のカントゥッチは今までよりも一段美味しく感じました。
今回はオーダーから調理、サーブに料理の説明までシェフ一人でやっていただき、なんとなく僕達だけのための専任シェフのイタリアンフルコースを楽しませてもらったような気分になりました。
またまた驚きの味で舌を楽しませてくれたことにとても感謝してます。
後任が見つかるまでは大変化も知れませんが、これからもご贔屓にさせていただきますので宜しくです。