日米安保

 

 

先日、戦後最長の延長で行われた国会審議で安保関連法案が成立しました。

この法案は野党の反対だけに留まらず、憲法学者違憲判断も含め、多方面のジャンルの著名人の国会前での反対表明が連日テレビに映し出されました。

とりわけ僕が気になったのは作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんと脳科学者の茂木健一郎さん。

この二人が国会前で行われたデモに参加し法案廃止を訴えた報道は、この法案に対する僕の考えに再考熟考を迫りました。

茂木先生の映像は発言内容まで確認できるものではありませんでしたが、瀬戸内寂聴さんのそれは第二次世界大戦へ向かっていった頃と今が酷似していて非常な危機感を感じるというものでした。

今回の安保法案の法案としての問題点は集団的自衛権の解釈に尽きるような気がします。

そしてそれ以外では法案成立の方法と手順でしょう。

ところで昨今の世界情勢、とりわけ日本に大きく関わることでは領土問題があります。

戦後の課題である北方四島返還については、ロシアがエリツィン時代に「法と正義のもとでの解決」を自ら提起し、返還に明るい兆しが見えました。

しかしプーチン時代に入り、特に昨年からはメドベージェフ首相が北方四島の一つ択捉島を訪問して実効支配を印象づける行動をとっています。

また島根県沖の竹島についても1953年以降の武力行使からの占拠し武装警官を配して実効支配状態です。

そこに歴代大統領として初めて韓国のイ・ミョンバク前大統領が訪れ、韓国の領土であるがごときの印象を強くしています。

そして最大懸念は一昨年に日本を抜いてGNP世界第二位にのしあがり、国防費を五年連続で二桁に伸ばし超軍事大国化している中国です。

その中国は1970年代の尖閣諸島付近での海洋資源発見後、領有権を主張し始めました。

習近平国家主席時代になってからは度重なる領海侵犯を犯した上に、一方的な「核心的利益」という文言で尖閣諸島の中国帰属を公然と口にしています。

このような日本に領有権のある島を、ロシア、韓国、中国という隣人が公然と実効支配したり主権の主張をしてきている今、どのような偶発的な衝突が起きても不思議とはいえない現状を鑑みた時に個別的自衛権のみで対応できるでしょうか。

自らの正当な利益を保つためには防御と抑止の双方が必要です。

抑止は外交が担うものであり、防御は防衛という守る力に頼らざるを得ません。

日本はアメリカ合衆国と安全保障条約を締結している同盟国です。

同盟を結びながら違憲だから集団的自衛権が行使できないというのでは不合理、不自然の極みです。

そもそも日本は憲法9上2項に「戦力を保持しない」とあるわけですから、自衛隊も日本各地に駐留している米軍も全て違憲です。

その違憲状態を戦後七十年にわたり解釈改憲で運用してきたのですから、何故今回の法案だけ違憲を旗印に大騒ぎするのでしょう。

今回の法案に反対している人々の中には、日本は戦争を放棄しているから戦争は起きないなどと昼行灯に考えてる人もいるようですが、戦争は必ずしも宣戦布告の上開始するものではありません。

宣戦布告されることもあります。

巻き込まれて結果戦争状態にならざるを得ないこともあるでしょう。

そんな一刻の猶予も許されず対応を迫られる緊急時に、集団的自衛権が認められていないから対応できないというような状況で、果たして国家は国民の生命と財産を守れる決断ができるでしょうか。

軍国主義帝国主義、徴兵制、戦争をする国…

もう少し冷静に考えてみる必要があるのではないでしょうか。

現代は大東亜戦争開始前夜の世相とは情報伝達環境において桁違い、いや異次元の環境にあります。

第二次世界大戦当時の統制された大本営の発表当時と、インターネットで世界中の人と結ばれて公式、非公式な情報が飛び交い情報過多となっている現代では、中国のような国家をあげての情報統制でもしない限り「事実」を隠蔽したり捏造することは困難です。

僕は決して積極的な法案成立賛成論者ではありませんが、世界情勢を考慮すると必要性を否定できません。

今後為政者に望むことは、抑止としての外交に綿密な計画に基づいた最大限の外交努力を払うこと。

その結果、自発的に集団的自衛権の行使がない状態が少しでも長く続く世の中であって欲しいと切に願います。