昨年入籍した長女。
二人で納得のいく挙式を挙げたいと考え抜いて行き着いた答えが海の見えるチャペルでのウエディング。
そして選んだのが沖縄 プライベートリゾートオクマ。
化粧室に入って娘を見た時、一瞬息が止まった ‥ 綺麗 ‥
いつもの調子で冗談まじりの楽しい会話をしたつもりだけど、それは自分の心に落ち着かせるため。
母にとっての嫁ぐ娘を送り出す心境は父のそれとは違うであろう。
それは喜びに満ち溢れたものだろうか。
それとも惜別の悲しみに耐える想いだろうか。
今まで何どもごく当たり前に娘とは腕を組んできた。
娘の買い物の付き合い、ちょっとした散歩、旅先ではしゃいだ際も‥
でも、今日のそれは意味が違う。
わずか数メートルのバージンロードを共に歩くだけなのに息が詰まった。
苦しかった、とても、とっても苦しかった。
笑顔を心がけた。
本当に必死の想いで笑顔を心がけた。
君も笑顔だったね。
でも、二人の額の間、たった数十センチの額の間が、すごく長いものに感じた。
南国の青い海と青い空の下永遠の愛を誓い合った二人。
目の前で起きていることが幻想のように感じる時間の流れだった。
チャペルの出口には迎えの新郎新婦。
新婦は妹とも母親とも笑顔で挨拶した。
でも、最後の僕の番になり娘を見ると瞳に涙をためていた。
それまで我慢してきた感情が大粒の涙とともに一挙に溢れ出た。
絞り出すようにしてなんとか云えた
「娘を宜しくお願いします」
娘は僕の手から本当に離れたんだと実感した。
嬉し涙‥
そう僕が流した涙はきっと嬉し涙 きっとそう。