初秋 海鮮三昧 伊豆の旅 Ⅰ

 

 

Babalinaのご招待

今年の三月末日で定年退職を迎えた僕。

しかしその後も嘱託として勤務を続けているので自分の中では退職という言葉がどうにもしっくりきていません。

 

しかし給与明細を見てみると嘱託であることを身に染みて感じるのですが、それ以上にその感を強くするのが退職記念のという形容詞のイベント。

 

慰労会、謝恩会、記念旅行、お食事会などなど、どうもまだ現役で働いている身にとってはピンとこなかったのです。 しかし定年退職から約半年が経過してその手のイベントもほとんどなくなったのですが、なんとbabarinaから長きのお勤めお疲れ様でしたの旅行プレゼントがありました。

 

 

 

最愛の妻からの嬉しいプレゼントの旅先は大好きな伊豆。

なんとも嬉しい限りで心待ちにしていましたが、あろうことか予定日は大型の台風17号が日本に接近の予報。

 

59年間のハイパー晴れ男の名をいっぺんで返上し、雨男を通り越して嵐を呼ぶ男になってしまった還暦だった昨年。

還暦の前半はことごとく台風に見舞われ旅行やイベントの順延、延期を繰り返しましたが後半は落ち着きだし、プチ晴れ男まで回復しました。

 

しかし今年関東直撃過去最大級の台風15号に見舞われルーバル&バルコニーが惨憺たる状況になりました。

そしてそのわずか二週間後、またまた大型の台風17号が日本に接近中。旅行とジャストミートだったのです。

 

 

 

運を天に任せた旅行日初日、台風17号は出雲沖の日本海を北東に向けて進んでいる模様。

しかし。。。 雨はありません。というか雲はあるものの晴れてます。プチ?いや普通に晴れ男再来かも(笑)

 

伊豆箱根に向かう際のド定番、海老名SAで休憩です。 というかこのSAの小田原吉匠の鯵の唐揚げを食べないと旅行が始まらないのです。

いつもは塩と醤油を一本ずつ食べるのですが、今回はお昼ご飯からヘビーな予定なので、新味かな?イタリアンなペペロンチーノ一本で我慢しました。

 

 

 

雲丹&いくら

今回の伊豆旅行はbabarinaからのプレゼント、しかも嬉しいことに料理の美味しさはプロが選ぶ日本の宿でも常にベスト3に入る名旅館 稲取温泉の銀水壮です。

 

この嬉しいプレゼントに呼応して両日のお昼ご飯は、今まで伊豆旅行をしてきた中での1、2の店を予定しました。

 

 

で、初日のお昼は麦とろ童子。 初めてこの店を訪れた五年前?ぐらいの頃は開店前に人が並んでることはありまあせんでした。

しかし今はSNSの影響でしょうか、隠れた名店もすぐに白日の下になり行列店です。 しかも国際色豊かになった日本を象徴するように、並んでいた人たちには日本人以外のお客様もいたようです。

 

店内は相変わらずの独特の枯山水を連想させるような独特のインテリア。

掛け軸も妙に味があります。

 

全面の窓からは通過中の台風など忘れそうな青空と輝く海が目に眩しいくらいです。

 

 

 

いつものようにお通しには大根の漬物、ワタリガニの小鉢、そしてニューサマーオレンジです。

 

お客様とのコミュニケーションを大切にする仙人のような名物主人の講釈も相変わらず絶好調。

前と違うのは行列の出来る店になった関係でしょう、ウエイター?それとも弟子?何しろ一人人手が増えていました。

 

まだまだ切れ味は悪いものの主人譲りのウイットのきいた講釈がこのウエイターからも。

こうなればやっぱり弟子ですね(笑)

 

 

 

お待ちかねの雲丹とろろ丼はbabarinaへ、イクラ丼ととろろは僕の目の前です。

 

相変わらずの海のルビーのような、本場北海道でも食べたことも見たこともないような大粒のイクラに先ずはため息。 一口口にすると上品な塩味が口の中ではじけます。

未体験ながら銀座 久兵衛イクラ軍艦巻きイクラはこんなものなのかな、などと妄想しながらドンドン食が進んでいきます。

 

残り半分ぐらいで摺り下ろした自然薯を加えると、また濃厚に味が変わります。

 

babarinaのド定番、雲丹とろろ丼もかなり強烈。

自然薯に雲丹が練りこまれた雲丹丼専用のとろろは、それ自体でも強烈なのに、その上にこれでもかといほど生う雲丹がトッピングされてます。

その味は。。。まさに雲丹まみれ(笑)

 

その強烈なインパクトのハワイのイタリアンレストランの雲丹パスタを超えてる?!と思わせるここの雲丹とろろ丼はbabarinaの大のお気に入りです。

 

 

 

美術鑑賞

美術館巡りも共通の趣味です。

今回は過去に一碧湖のそばに宿泊した際に訪れたものの休館日でご縁のなった池田20世紀美術館にリトライです。

 

伊豆高原は一碧湖の近くにあるこの美術館は、それほど大きくはないのですが現在美術を中心になかなかスパイスのきいた作品が常設されてるとのこと。

 

素敵な時間を過ごせそうな予感。

 

 

 

僕が一番好きな画家のジョージア・オキーフも間違いなく現在美術の画家です。

 

しかしキュビズム以降のピカソゲルニカはじめ多くの抽象画も含めて僕にはなんか過ぎて少々敷居が高いのが現代アートでした。

 

その現代美術が多く常設されてる池田20世紀美術館の中で最初に魅せられたのが画像左のエリー・ラスコーの作品です。

説明によりますと陶器の絵付け職人だったらしく、その際の色彩感覚や造形美が油彩にもスライドしているのでしょう、独特の世界観があります。

 

次は「女道化師」を描いたモース・キリング。 メランコリーと官能、どこか耽美ながら抜けようのない底はかな陰りを感じさせるこの絵の作風には、親友だったモジリアニの影響を感じます。

 

 

 

ムンクといえば「叫び」「叫び」といえばムンクというぐらい強烈な作品のムンク「叫び」 「叫び」以外のムンク作品を目にしたのは個々が初めてです。

 

「罪」と名図けられた左のリトグラフの絵画のモデルはムンクの愛人で愛称トゥラ。

彼女からの結婚要求を拒み続けた結果、彼女のピストル暴発事件で中指をうしなったムンク。 この一件で女性への不信と恐怖は強迫観念になり、その後のムンクの作品に大きな影響を与えたとありました。

 

「叫び」はその延長線上の作品直でしょう。

ただし他の作品にもどこかサイコパス的な一面を感じてしまうのは僕だけでしょうか。

 

 

 

シャガールピカソマティスの現代美術三大巨匠の作品です。

 

シャガールはどれも宙に浮いたような不思議な世界観で浮世離れした多くの作品があります。

 

説明不要のピカソは作風でいくつかの時代に分かれますが、この「近衛兵と鳩」はピカソ88歳の作でキュビズムの作品です。

ピカソキュビズムに突き進んでいった原因の一つは写真の登場ということを聞いたことがあります。

それまでの写実的な手法は写真にかなわないと察し絵画芸術でしかないし得ない作風としてキュビズムが生まれてきたそうです。

 

最後はマティスの作品です。

 

正直に告白します、やはりキュビズムの良さがわかりません(笑)

僕が理解できる限界にして美術絵画の頂点がオキーフなのかもしれません。

 

 

 

最後はご存じアンディ・ウォーホル

マリリン・モンローを色彩で何種類にもデフォルメした作品です。 同じ手法で毛沢東をモチーフにした作品がありますが、それはかなり前に軽井沢現代美術館で目にした記憶があります。

 

ひとつの同一のモチーフをカラーでデフォルメするという手法が新しかったのでしょう。

ただし僕にとってこの手の作品はポップアートであって美術作品という域で語るには少々抵抗があります。

 

でもポップアートも美術作品も、その定義も区分けも人間が作ったもので、表現という意味ではどちらも同じなんですけどね(笑)

 

 

 

 

現代のフェルメール

二階の常設スペースが終わると一階のイベントスペースが待っています。

 

階段を下りながら目に入った作品を見て、今回は写真展だと判断しました。

ですから実は油彩だとわかった時の驚きは尋常じゃありませんでした。

 

光と影の表現、肌の表情、服の素材の質感、髪の毛一本一本まで正確に描き出された作品は、顔が付きそうなほどの至近距離で見て初めて油彩かも。。。と思える精巧さ。

いやはや度肝を抜かれました。

 

 

 

右のデッサンで描かれた少女の肌、髪の表情。

そして明らかにコットンとわかるシャツの素材の質感。 鉛筆のデッサンだけでこの表現が出来ることにはため息しか出ません。

 

そして更なる驚きは和服の女性。

髪の毛の艶に表情、そしてその胸の内までわかるょうな目と口元の表現に声も出ませんが、呉服屋に生まれた僕が一番驚いたのは色無地であろうお着物の素材感。

どうやれば、どんな技法を用いれば、ここまで精巧に正絹縮緬の表現が出来るのか。。。 見慣れてる分言葉もありません。

 

そして等身大で描かれた人々。

精巧なスケッチかつ等身大が故の迫力は、現物を目の当たりにすると一瞬言葉に詰まる力を感じます。

 

 

 

和服の日本画を描いていることらもわかるように、これらの作者は高木公史という僕より一歳若い日本人です。

東京藝術大学油画科を首席で卒業後ドイツのデュッセルドルフ芸術アカデミーも卒業しているようです。

 

写真じゃないlとわかってからの第一印象は、その光と影の表現の巧みさにスーパーリアルな写実で現代のフェルメールと思いました。

いるんですね日本にも、こんな凄い画家が。

 

 

 

世界に数ある建築物の中でも最もポピュラー、有名なものの一つはサグラダファミリアでしょう。

そしてその建築家がアントニオ・ガウディであることも周知の事実です。 建築中のサグラダファミリアTVや書物で見たことがある人は多いでしょうが、ガウディの顔を知って人は極少ないlと思います。

 

画像は路面電車にはねられあっけなく亡くなったガウディのデスマスクのレプリカです。

古代ローマの哲人のような雰囲気がありますね。

 

 

 

美術館は建造物としても興味をそそられる造形美、レイアウトなのですが、ここは比較的シンプルな構成です。

 

それは主役である作品を活し且つ美術館としての造形美を求めた結果の設計でしょう。

連続した面で構成された館内は面の連続体の角度の変化と、吹き抜けを使った空間の広がりにスマートな感じを受けました。

 

現代美術館の名称に即したコルビュジェの近代建築の定義を踏襲したようなクールさがありますね。

 

 

 

美術館を訪れる度に、そこで出会った美術品の中でお気に入りの絵葉書を記念に購入するのが常です。

ただ今回は迷いました。

 

一番手に入れたかった高木公史の作品が絵葉書として売り出されてなかったのです。

致し方なくといってはなんですが、ぎりぎりの選択でウォーホルのマリリン・モンローを手に入れてきました。

 

ピカソシャガールマティスはあまりに僕の指向と違いすぎました。

 

 

 

銀水荘

銀水荘。。。

プロが選ぶ日本の宿では常連のこの宿に初めて投宿したのは実は昨年のこと。

 

それ以外の常連の山形古窯は毎年伺う定宿ですし新潟の泉慶も投宿しました。

日本一の宿加賀屋は何度も金沢を音連れてるのにご縁なく。冥途の土産かな?(笑)

 

そして地理的に一番近かった銀水荘。しかしいつでも行けるはいつになっても行かないなんですね。 でも去年体験してよかったです、評価を裏切ることのない素晴らしい宿です。

 

泉慶の全てのお客様に女将が挨拶に来る姿勢も素晴らしいですし、古窯のスタッフの素朴な心温まる対応も嬉し限りです。

そして銀水壮の売りは洗練されたサービスでしょう。

 

全室海に面した客室はそれなりの年輪を感じますが清潔感がそれを勝りますし、心憎いまでのさりげなさが心に染みる宿です。

 

 

 

今では一般的になりつつあるウエルカムドリンクを初めて経験したのは、かれこれ25年ほど前かな?沖縄のブセナビーチリゾートに宿泊した時でした。

 

遮るものがないそよ風の回廊のような東シナ海を臨むロビーで、ソファーに体を沈めてウエルカムドリンクを飲みながらロッジングブックに記入しました。

 

ここ銀水壮ではチェックインしてからラウンジで海を見ながらのウエルカムドリンクサービスです。

ビールにオレンジジュース、珈琲紅茶が選べます。

 

 

 

食事の前に温泉を楽しむのは温泉に出かけた際のルーチンです。  

銀水壮のお風呂は、大きな内風呂、その内風呂の2/3ほどの露天風呂、その先の海で構成されてます。

 

ドライブの最中に何度か通り雨にはあたりましたが、大型の台風の影を感じることはなかったのですが、露天風呂からみる雲の流れと風でそれを意識しました。

 

烏の行水も多いといわれる男性にあって長風呂の僕ですが、今回はサウナも楽しみながら1時間を超えてゆったりとさせてもらいました。

 

 

 

旅の楽しみの一つ、いや我が家では最大の楽しみかな?(笑)

それは美味しい食事の時間。

 

44回(2019年)プロが選ぶ日本の宿で堂々の総合3位に選ばれた稲取温泉 銀水荘。とにかくここの食事は大型旅館のそれとは明確に一線を画すものです。

 

既製品は皆無で全てのものが料理長のレシピ、指示のもと調理されてるのが素人でもわかります。

一手間、二手間を惜しまず食材を最大に生かしていく姿勢は、落ち着きのあるモダンな半個室の食事処と相まって至福のひと時を約束してくれます。

 

 

 

定宿 上山温泉の古窯の食前酒が梅酒なら銀水荘はミカンのニューサマー酒。

 

先付けは雲丹を乗せた白胡麻豆腐、金目鯛の塩麴漬け、フォアグラのテリーヌ、こまい一夜干し、サーモン昆布巻き。 これらが皆明らかに一手間、一工夫なされていることがわかります。

 

酢の物はたたき鰆のみぞれ和えで この酢の物が絶品。

何が絶品かというと全体としては酢の物なのですが、そこにしっかり出汁が利いているのです。

 

これには少々驚きを禁じえませんでした。

器も上品で食材を活かしています。

 

 

 

前回も口にしていると思うのですが鰈の西京焼きが、僕の知っている西京焼きとは違いこれまた絶品。

 

西京味噌に漬け込んで味が染み切った鰈の身から味噌を完全に取り除いてから焼いてるのでしょうか、西京味噌の感じが微塵もありません。

その旨味だけが身に染みた感じで、得も言われぬ上品な香ばしさと甘みを、ふっくらと蒸しあがった身から楽しませてもらいました。

 

同じく程よく蒸しあがった鮑はきっちり肝と身を切り分け、さらには硬い口の部分を取り除いてくれました。

程よい弾力の鮑の身は味が濃縮された感じで、歯でも舌でも鮑を楽しませてもらいました。

 

つぶ貝の磯蒸しは出汁の妙技?でしょうか、信じがたいほど甘みが強く、思わず出汁単体を何度も味見した次第。

 

 

 

お造りは隠し包丁の入った烏賊に湯引きが施された鰆、そして真鯛に鮪の四種類。

どれも選ばれた鮮度の良さが歯触りでわかりました。

 

約一年ぶりの再会(笑)となった銀水壮の金目鯛の煮付け。

最初の衝撃と同じように他では味わうことのできない上品な金目鯛の煮付けの上には、刻みしょうがが乗った茄子の揚げ物。 色に変化のない大根もなぜか旨味を十分に吸った美味しものでした。

 

ゆず味噌を使ってのビーフシチューは去年よりも美味しく感じました。

その差はゆず味噌の風味の差でしょうか、ほろほろととろける食感は同じでしたが風味と旨味が一段丸くなった気がしました。

 

 

 

食事はご飯に止め椀に香の物。

辛子明太子の上に乗った野沢菜と山形の出汁は共にご飯が進む香の物です。

旨味が凝縮された蟹汁もあり思わずご飯のお替りをしたくなります。

 

水菓子は杏仁豆腐。 正直会席料理の最後にはあまり似つかわしくないメニューとは思いますが、口にしてみるとことのほか美味しい。

少し上品目な杏仁豆腐は爽やかなさっぱり感をもたらしてくれました。

 

銀水壮のお食事は総じて上品で洗練された日本料理です。

大型の宿泊施設にもかかわらず冷たいものは冷たいままで、温かいものは温かいままで食してもらうための器具の仕掛けや、人手の仕組みがうまく機能しています。

 

ですから本会席料理の様に一皿づつ供されることはありませんが、半個室の食事スペースと相まって気分もゆったりと食事を楽しめます。

今回も十分に堪能しました、ご馳走様でした。

有難うございました。

 

ちなみに銀水槽はプロが選ぶで3位以外に、じゃらんでは2018年度のアワードで1位を獲得したようです。

このサービス、この雰囲気、この味なら納得です。

 

 

 

ベッドでの生活を送っていると畳に敷かれた布団が恋しくなることがあります。

やはり日本人、このスタイルがDNAに刻み込まれているのでしょうか(笑)

 

いいお湯につかり、美味しいものを食べて、身の心も解放されて畳に敷かれた布団の上に寝そべる。。。

 

いつともなく熟睡してしまっているんですよね(笑)