浅草で洋食と寄席

早いもので今年もあと二か月強。あっ!という間に、もうすぐ11月という感じです。感覚的には時が経つのは年齢に反比例するような気がします、若い頃はもっと一年が長かった気がしますね。

 

今はハローウイン一色ですが、11月になると街は赤と緑を纏い、一気にクリスマスに走り出します。そうなると年末という言葉に違和感を感じなくなりますね。

 

そんなどこかで年の瀬をうっすらと感じるようになった今、有り余る有休を使って家内と二人、もしかしたら、いや多分本年最後の寄席、そう笑い納めで浅草に行ってきました。

 

 

お昼は浅草の洋食の老舗 ヨシカミでランチ

「うますぎて申し訳ないっす!」という衝撃のキャッチフレーズの老舗洋食屋のヨシカミ。名前だけはかなり前から知っていましたが、還暦前の若い?頃は、六本木、青山、恵比寿、代官山、中目黒という、今でいう「映える」街がホームグランドでしたので、浅草そのものに、ほとんどご縁がありませんでした。

しかし今や浅草はホームタウンに近い状態です(笑)

 

11時半開店なので、11時にでも並べば平気でしょうと高をくくっていましたが、これがとんでもない話。11時の段階で、もうすでに20人ぐらいの行列が出来てるじゃないですか!
その後もどんどん列はつながり、店の人の誘導で僕たちの後、三人目からは写真にあるように道の反対側に並ぶようになりました。

結果開店の11時半には40人を超える長蛇の列になっていましたね、恐るべしヨシカミ。

 

 

店頭のチラシにもヨシカミの真骨頂はステーキとシチューとあります。かなり自信があるようで、並んでいた際にも僕たちの前の中年の三人組が、ヨシカミといったらシチューでしょう!といってたので期待大です。

 

ヨシカミは曜日ごとにランチのメニューが決まっていて、どの曜日でもつくスープとデザート以外の二皿が変わるシステムで、今日、月曜日はナポリタンとビーフシチューです。それ目当てでのこの大行列だったんですね!

ちなみに僕たちもその手の輩でした ^ ^;;;

 

僕たちの前の中年三人組までがテーブル席へのご案内でした、残念!

ということで僕と家内はカウンターへどうぞ、となりました。ヨシカミの店内はまさに昭和、それも40年代で時間が止まった感じでした。

調度類に雰囲気、どれをとっても自分が小学生の頃に、どこかで見たことがあるような懐かしさがありましたね。

 

 

カウンターからよく見える位置には、ヨシカミを訪れた多くの著名人、有名人の色紙が飾られていました。

高橋英樹とまあさ親子も来ているみたいですね、いうまでもなくステーキとビーフシチューを食べたんでしょうね。

 

 

カウンター席でラッキーだったのは、僕の席がオープンキッチンのガスコンロの正面だったこと。調理の様子をつぶさに観察することが出来ました。

 

全行程見ることが出来たのがナポリタン。その作り方には驚かされました。

まずは具材のマッシュルーム、玉ねぎ、ハムとインゲンを強火で炒め、そこに既に茹でてあるスパゲッティを入れるまではオーケー。問題はトマトケチャップ以外の調味料です。

スパゲッティを入れて大きなフライパンを回しながら焼く作業をして、最初に入れた透明な液体は多分、オリーブオイルかサラダ油でしょう。

次に入れたのがチンザノの白!ん?白ワイン替わりか?で次に入れた黒に近いエンジの液体はバルサミコじゃないのーー!!

 

えーーー!バルサミコ入れるのーーー?

そのあとブランドのわからないトマトケチャップを大量に投入して、回し焼きをして完成。

誠に失礼ながら。。。そんなんで美味しいの?という疑念がふわふわしてきました。

 

 

最初に供されたのはコーンスープでした。

粉っぽさもなく、かといって取り立てて美味しいわけでもなく、今風に言えば「普通に美味しい」でした。

 

それと家内の左手ですが。。。今年に入ってからかな?なんか関節が痛いといいだし、僕はリュウマチの再発を懸念して、しっかり検査してもらうようにいいました。

結果はリュウマチではなく加齢によるものとのこと。

 

しかしそうなると高齢者はもれなく関節が痛くならないと道理に合わない。そんな馬鹿なもあり、彼女のセカンドオピニオンも含め、コロナも5類になったので夫婦で人間ドックを受信したという事情でした。

その結果人間ドックでもリュウマチの疑いはなく、加齢によって過去にリュウマチを患った人には、時に関節痛が生じることがあるとの説明を受けたようです。

 

なので関節痛予防で湿布をして出かけしたわけです。

 

 

問題のナポリタンです(笑)

結論からいいますと「普通に美味しい」

どういうことかというと、イタリアンのポモドーロとはまさに別物。やはりナポリタンは日本初のイタリアンだってことです。

 

イタリアンのポモドーロは味に深みもあり複雑なうま味がある三次元的な美味しさなのですが、ナポリタンはもっと明快な二次元的な美味しさ。そう、味わなくても舌にのせた瞬間から美味しい、そしてその美味しさにその後の変化もなく、直球のように胃袋に収まる明快な美味しさなのです。

 

個人的にはやはりイタリアンのポモドーロに軍配が上がるのですが、家内はこのナポリタンも凄くおいしいと高評価でした。

 

 

ヨシカミの売りのビーフシチューです。特筆すべきは軟らかく煮こまれたお肉です。ナイフがまず不要の、フォークだけでほぐれるトロトロのビーフでした。

味は代々継承されてきた正当な洋食屋のデミグラスソースなのでしょう、微かに苦みの残る濃厚で複雑な味は、お肉と相まってとても美味しいものでした。

 

ただ思ったことは。。。

形態が違うのだから一緒の土俵で比べちゃいけないことかもしれませんが、味なら山形かみのやま温泉の日本の宿古窯の晩御飯の会席で供されるビーフシチューのほうが美味しい。

 

そもそも僕はあまりデミグラスソースの味を好みません。ですから正当な味よりも、古窯のように少し今風に?より日本人向けに?アレンジされたほうを好むのかも知れません。

 

食後のデザートはコーヒーかアイスクリームを選ぶことが出来ましたが、夫婦そろってアイスクリームを選びました。自称珈琲通の僕ですが、ここで供されるコーヒーの味が何となく想像できたので、アイスにしました。

もうなくなる?なくなった?新幹線の車内販売のアイスほどじゃなかったですが、固いバニラのアイスも「普通」に美味しかったです。

 

 

料理が趣味の僕にとってありがたかったのが、やはり調理姿を見ることが出来たこと。

ナポリタンをはじめ、チキンライス、オムライス、チキンソテーなどを作る工程を見ることが出来ました。

 

見入って唸ってしまったのがオムライス。今はやりの半熟状態のオムレツにナイフを入れてチキンライス全体に半熟卵をいきわたらせるそれとは違い、ヨシカミのオムライスは薄焼き卵でチキンライスをしっかり包んでしまう、オーソドックスなものでした。

 

その薄焼き卵にのせられたチキンライスをフライパンワークだけで、本当にきれいに包み込んでいく様に魅入りました、凄い職人技です。

 

やれナポリタンは二次元的な味とか、ビーフシチューならもっとうまいところがあるとか生意気なことをいいましたが、このスープ、ナポリタン、ビーフシチュー、バニラアイスを、なんでも値上げのこのご時世に、税込み2000円で食べさせてくれるなんて驚愕です。もう、お見事!天晴!としか言いようがありません。

本当に有難うございました、ご馳走様でした。




ここも昭和ど真ん中 浅草演芸ホール

年に何回か訪れる浅草演芸ホール、僕たちの贔屓の寄席です。ここもヨシカミに負けず劣らずの昭和ど真ん中を行く建物とシステムです。

まず開演前や中入りでのアナウンスが振るってます。「。。。なお、館内への酒類の持ち込み、飲酒は固く禁止となってます。。。」

このフレーズ、同じ寄席でも上野鈴本や新宿の末廣亭国立演芸場のどこでも聞いた記憶がないのです。つまりあまりに当たり前すぎてアナウンスする必要がないのでしょう。

しかし浅草演芸ホールは他と一線を画します、いいます、いわなきゃいけないのです。うっかりするとマナー違反の意識もなく飲酒する輩が本当にいそうだから。

 

それと写真を見ればわかるような気がしますが、浅草演芸ホールには開演して間もないのに、場合によっては開演前から眠れる森の美女ならぬ、熟睡する浅草のGGが大量発生します。

写真には写っていませんが僕の二席となりのGG、前の席のGG、通路を挟んだ隣席の一列前に座るGG、すべて熟睡状態です。

 

そしてなぜか、なぜかこの熟睡する浅草のGGは、よせばいいのに前列二列目から四列目に集中します。最後列とかならまだ発見されにくいと思うのですが、寄席のべスポジで、落語を子守歌に熟睡するのです。

 

この手の光景は少なくとも鈴本と国立演芸場では遭遇した記憶がありません。(もしかしたら新宿末廣亭はあるかもしれない匂いを感じます)

 

この手のことも昭和なら極めて当たり前だったような気がしますが、令和の今でも浅草演芸ホールでは普通に行われているのです。

 

それと浅草演芸ホールは昼夜の入れ替えがありません。その気ならお昼の部のしょっぱな12時前から、夜の部のラスト21時までの9時間以上を、ここで過ごすことも出来ます。

 

何かのテレビ番組で令和の若者が一番驚いた昭和のシステム、しきたりをやってましたが、栄えある一位に輝いたのが「昭和は映画館の入れ替えがなかった」ということ。

令和の今、最も驚かれる入れ替えなしシステムが、ここ浅草演芸ホールでは脈々と生き続けているのです、ハイ。

 

昼の部

初めての噺家でしたが、なかなかいい落語でした。

 

 

桂歌春は、今は亡き名人で、長く笑点の司会を務めた桂歌丸の一番弟子。

そろそろ歌丸を襲名したらといわれますが、襲名するには毛量が多すぎてというのが最初のつかみが定番です。

 

 

長く噺家をしている人は、最初のつかみの引き出しが多いので楽しいですね。

三遊亭茶楽は、まさにその見本のような感じでした。

 

 

この噺家はどこかで見たことがあるかも、という人もいそうです。たまにテレビに出ることもありますからね。

噺もうまいですよ、間のつかみ方がとても上手です。

 

 

この噺家もいいです、味があります。

 

 

昼の部のトリが古今亭寿輔で、実はお初でした。

会場からは「待ってました!」の掛け声が。さすがトリを任されるだけあって人気者ですね。落語もどどいつを主体にした、創作?即興?なにしろ面白い噺でした。

 

 

夜の部

途中で退席した夜の部で印象的だった噺家です。

落語には人生経験が大きく影響しますね、というか芸事は皆そうなのかも知れません。

 

 

昼の部のトリの前が紙切りの林家今丸。実はこの紙切りは初めてだったのですが、試し切りで切った舞妓さんがあまりに綺麗だったので、絶対にいただこうと心に決めてました。

「この舞妓さん、欲しい方」

「はいーーーー!!!」

素早い反応で手に入れることができました。ありがとうございます。

 

 

演目の挿絵は、笑点大喜利メンバーの林家たい平作のようです。

たい平にはこんな才能もあったんですね、人は見かけによらぬもの(笑)

 


あまり有名な噺家の出演はありませんでしたが、前座、二ツ目、真打とみなレベルが高く、いってみれば有名な四番打者はいないものの、どこからでも点が取れる打線のチームのような構成でした。

 

夜の部のねずっちまで聞きたかったのですが、それを上回る用件のために後ろ髪を引かれる思いで浅草演芸ホールを後にしました。

 

 

晩御飯は永井荷風御贔屓の蕎麦屋

ということで、ねずっちの舞台を蹴ってまで向かった先は、これも老舗。浅草で蕎麦といえば尾張屋、尾張屋といえば蕎麦といわれる名店の営業時間内に、店に滑り込むためでした。

 

今晩の晩御飯は永井荷風がこよなく愛した浅草の蕎麦屋 尾張屋本店です。

 

 

注文は、「えびの尾を張るように勢いよく」という店名の由来の海老の天ぷらが豪快に二本のった、尾張屋の名物の天ぷらそばです。

店舗奥のほうには尾張屋本店で蕎麦をすする文豪 永井荷風の白黒の写真が飾られていました。

 

 

供された天ぷらそばは、丼から大きくはみ出したピンと尾を張った特大の海老天が二本乗った豪快な蕎麦でした。

この海老の天ぷら、そんじょそこらの定食屋、洋食屋で出される海老フライのそれをはるかに凌駕するような大きさで、心の準備はしていたものの正直驚きを隠せませんでした。

 

蕎麦はこれ以上は無理lというほどの細切りで、醬油の角の取れた汁と相まって上品な味が、豪華な海老天と妙なミスマッチで、それがまた味であり売りであると感じました。

 

美味しかったです、ご馳走様でした。